研究概要 |
相関の良いスペクトル拡散系列として知られる完全相補系列を用いた電子透かし方式について,秘密情報の抽出時に原画像を参照しない,いわゆる「ブラインド方式」と呼ばれるアルゴリズムを提案し,その特性評価を行なった。その結果,原画像の参照を行なう「プライベート方式」と比較すると,画像抽出時の相関関数におけるS/N比が,ブラインド方式において30dBほど劣化するものの,IDの抽出は十分に可能であり,さらには,M系列やGold系列など,他のスペクトル拡散系列を用いた場合と比較しても優位性を有していることが確認できた。また,電子商取引などにおいて,購入者のIDをデジタルコンテンツに埋め込む「電子指紋方式」へのアプリケーションを考慮し,提案方式が結託攻撃への耐性があるかどうかを調査した結果,ある程度の耐性を有することが確認できた。しかし,従来法との比較が不十分であるため,従来法と同じ検証を行なって公平な比較を行なうこと,および必要に応じて改良を加えることを次年度の課題とした。 また,提案方式は,自己相関特性のみならず,相互相関特性にも優れた系列を用いていることから,多数の秘密情報を同時に1枚の画像に埋め込むことを想定し,この場合の特性評価を行なった。これは,著作権者のリストを埋め込んだり,大きな情報を多重化して埋め込んだりするために有用であると考えられる。計算機実験の結果,必要なパラメータを適切に選ぶことにより,非常に低い抽出誤り率を実現できることが明らかとなった。このアイディアを拡張することで,ステガノグラフィ方式を実現することも可能で、次年度の研究では,このようなステガノグラフィ方式についても検討することとした。 提案した情報ハイディング技術を教育現場で利用しながら評価するための方式について検討し,「技術者倫理」や「情報通信工学」の授業の中で,事例紹介やデモンストレーションを行なうなど,演習などの形式により実施することとした。実際の授業や演習は次年度に行なうこととした。
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