研究概要 |
脳活動システムの状態を推定し,また脳活動状態の変化を数理モデルで表現することができれば,脳波の異常や脳活動変化を伴う疾患の診断・治療支援に活用できる。本研究では,脳波(EEG)及び脳活動システムの可塑性に着目した数理モデルの構築を通して,脳活動状態を解析するシステムを開発し,これを特に聴覚系における周期的刺激の想起や耳鳴り音響療法治療過程に適用することを目的として研究を行い,次の成果を得た。 (1) 多層パーセプトロンの学習による推定をリアルタイムで行うための性能向上を実現するため,システムのソフトウェアにおいて高速化を図るとともに,脳波計測におけるニューラルネットワークや独立成分分析の手法を用いたアーティファクト除去法を開発した。 (2) 周期的聴覚刺激(クリック音)を被験者に与えて学習させ,その想起を行わせる実験を行い,想起における脳信号源を,ニューラルネットワークを用いて推定するシステムを改良した。刺激の周期と想起実験における脳活動の周期を厳密に比較するため,加算平均データを用いることとし,その同期のために,音刺激の開始時に音刺激と同期した電気刺激を被験者に与え,想起時には電気刺激のみを与えてタイミングを取るシステムを開発した。 (3) 耳鳴り音響療法治療過程における脳聴覚系神経活動について,シナプス結合の可塑性を組み込んだ,脳活動変化の再現が可能なできるだけ簡素な数理モデルの構築を目指し,神経細胞モデルにHodgkin-Huxleyモデルを用いた数理モデルを構成してシミュレーションを行い,有望な見通しを得た。2細胞回路モデルと3細胞回路モデルの比較を行い,シナプスの可塑的変化の結果による振動停止を表現するには3細胞が必要であることを示した。
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