アルカリ金属原子に円偏光のレーザー光を吸収させて電子スピンを揃え、外部磁場による電子の歳差運動をレーザーで観察する原理の光ポンピング原子磁力計について、MEMS(マイクロマシン)技術による小型セルアレイの作製方法を開発する。アルカリ金属は反応性が高く、大気中での加工ができない材料であるので、サブミリメートルサイズの多画素アレイを作製するプロセスを構築することは工学的には極めて重要である。本研究では、産業化、低コスト化、普及にむけての基盤技術となる小型セルの作製方法を確立し、小型化と感度のトレードオフ関係を調べ、微弱磁場の画像計測手法を開発することを目的としている。平成22年度は、以下の成果と知見を得た。(1)メタルマスクと、カリウムが入るキャビティーを、50μmの精度で真空中で位置合わせする機構を実現した。メタルマスクはシリコンのRIE加工によって作製した。(2)金属カリウムを溶融蒸発させて、ノズルからガラスマスクを通してキャビティー内に蒸着させる蒸着ガンを作製した。(3)カリウムをキャビティー底部に蒸着後、バッファーガス零開気中でパイレックスガラスをシリコン基板に重ね合わせ、アノードおよびカソード電極を2層基板試料に接触させる機構を実現した。1kV程度の電圧を印可して、アノーディックボンディングによりカリウムを封入できた。しかし素子全面(25セル)での均一な接合はまだ実現できていない。(4)セルの透過光にカリウムの吸収スペクトルを確認した。セル一個毎の磁場依存性を評価するために、現在は光ファイバーを使った新たな評価方法を開発している。
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