研究概要 |
アルカリ金属原子に円偏光のレーザー光を吸収させて電子スピンを揃え、外部磁場による電子の歳差運動をレーザーで観察する原理の光ポンピング原子磁力計について、MEMS技術による小型セルアレイの作製方法を開発する。アルカリ金属は反応性が高く、サブミリメートルサイズの多画素アレイを作製するプロセスを構築することは工学的には極めて重要である。本研究では、産業化、低コスト化、普及にむけての基盤技術となる小型セルの作製方法を確立し、微弱磁場の画像計測手法を開発することを目的としている。平成23年度は、以下の結果を得た。1.穴径800μm、深さ500μmの円筒穴セル(5x5個)では、アノーディックボンディング(AD)用の針電極に近い場所では封止ができたが、チップ周辺部は封止できなかった。カリウムKのD1線の吸収が確認されたが、磁気感度は得られなかった。2.体積を増大させるために穴径を1600μmに拡大したセル(4x4個穴)も作成したが、周辺部で接合できなかった。3.アルカリ金属存在下でのADの不安定性を調べるために、Csでも同様の封止実験を行った。Kでは部分的に接合したが、Csでは全く接合しなかった。金属状態でのアルカリ金属蒸気がSi表面に付着することにより、ADが阻害されることが判明した。4.アジ化カリウムKN_3の真空中での紫外線分解を試みたが光強度が不十分で金属カリウムが得られなかった。5.微小セルでは複数のビームの導入が困難である課題を解決するために、楕円偏光のシングルビームで測定する方法を開発した。楕円率を最適化することにより、ポンピングとプロービングを同時に実現し、体積が1,000mm^3のセルを使用して、3kHzで300fTの磁気信号を検出できた。セル自体の封止方法には課題が残っているが、小型化に適した実用的な励起・計測方法は実現することができた。
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