研究概要 |
無線端末の動的位置計測法の構築に際して,先行研究で議論してきた距離不等式に基づく位置計測法の拡張・発展的な応用には,(1)端末間通信時の正確なRSSI情報の獲得問題と,(2)情報収集の非同時問題につき検討が必要とされる.(1)に関し,距離不等式に基づく位置計測法では,主としてRSSIの信頼性に依存すると考えられる精度の悪化が見受けられた.そこで,無線端末の人体装着位置,あるいは人体による通信経路遮蔽等がRSSIへ及ぼす影響の実験的調査と,影響を受けたRSSI選別法の検討を進めた結果,それらの影響は無視できず,さらに信頼性の低下したRSSIの除去が位置推定精度向上へ効果的なことを確認できた.しかし,人(遮蔽物)の配置が未知な実問題では獲得されたRSSIの信頼性評価は困難であり,本研究での利用を断念し,電波飛行時間を基にした絶対距離計測法を検討することとした.電波飛行時間に基づく距離計測系は,極短い飛行時間を捕らえられる高い時間分解能を必要とする.本研究では無線センサネットワークの限られた枠組み内での計測の実現に向け,バーニヤ効果に基づく時間計測原理を検討した.そこでは,送受信機間で異なる処理クロック周波数(周期)を用いることで,それらクロック周期差を分解能とする高精度時間計測系を実現できる.本原理を検証する実験装置を構成して飛行時間計測を試み,設計通りの高時間分解能をもつ計測系が構築可能なことを確認し,位置計測精度向上への足掛かりを得るに至った.また(2)については,非同時問題にまつわる端末間の距離情報獲得タイミングの時差が位置計測結果へと及ぼす影響に着目し,その性質に関する解析的な議論を実施した.さらにそれらの影響を低減するための重み付き最小二乗に基づいた位置推定法を提案するとともに,情報獲得周期や獲得時差の条件を変動させたシミュレーション的検証を通して,その有効性を明らかにすることまでを達成できた.
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