前年度の研究では、光学特性及び水素感応性に優れたPt/WO_3薄膜をゾルゲル法により作製するための最適条件を明らかにした。本年度の研究においては、この薄膜を高屈折率コア材料に固定化したセンサデバイスを作製し、各センサデバイスの応答特性及び長距離伝送特性の評価を行った。さらに、デバイスの高信頼性化と長期安定性を向上するために必要不可欠な水素応答特性の湿度依存性についても検討を行った。まず、屈折率が約1.7のサファイアファイバへのPt/WO_3薄膜の固定化を行った結果、前年度評価した石英系ファイバと比較するとデバイスの光伝搬損失はやや改善されたが、水素応答性はほぼ同様であることがわかった。また、屈折率約2.4のカルコゲナイドファイバの場合は、薄膜の固定化ができなかったため、十分な水素応答性が得られなかった。一方、屈折率約2.0のBi_2O_3系ファイバにゾルゲル法でPt/WO_3薄膜を固定化したところ、厚さ100~200nmの水素感応薄膜がファイバ外周に形成された均質なセンサを得ることができた。さらに、特性評価の結果、伝搬損失がその他のコア材料に比べ大幅に低減化されるとともに、水素応答特性も比較的良好であることを明らかにした。次に感応部長さが約25cmのセンサを10mのBi_2O_3系ファイバケーブルに3箇所配置したセンサを作製し、水素応答特性を評価した結果、独立した応答が得られ多点センサとして十分な性能を有することを確認した。また、テフロン系の保護皮膜を被覆したセンサを作製した結果、応答速度はやや低下するものの、湿度依存性がある程度改善できることがわかった。また、光ファイバ酸素センサの感応クラッドとして用いるルテニウム錯体膜についても、前年度明らかにした錯体とシリコン樹脂の最適配合比率の感応クラッドをBi_2O_3系ファイバに固定化したが、感度特性が大きく改善されることがわかった。
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