研究概要 |
平成23年度は、水素を検知ターゲットとして長尺センサデバイスのプロトタイプの作製・評価を行った。前年度成果より酸化ビスマス系高屈折率ファイバを用い、これに約100-200nmのPt/WO_3薄膜を固定化したセンサが最も優れた特性を有することが明らかとなったので、本年度はこのデバイス構造をベースとし、ディップコート法をファイバに適用できる専用の治具を作製することで10mのファイバ上に均一にPt/WO_3薄膜を形成することができた。センサデバイスの伝搬損失は約0.25dB/mであった。OTDR測定の一般的なダイナミックレンジが20dB程度であることを考慮すると,この結果は約80mのセンサ長が実現可能であることを示唆しており,ライン型センサとしての応用展開に大きな期待が持てるものと考えられる。次に、ファイバセンサ上に形成された各センサ部を異なるガス雰囲気に制御できる長尺センサデバイス用の評価試験チャンバーを作製し、各センサ部に単独で水素を曝露したときとセンサ部を同時に水素曝露した場合のセンサ応答を調べた。その結果、各センサを単独で水素曝露及び空気置換した場合はそれぞれの素子の応答が独立して現れていること、各センサ部を同時に水素曝露した場合は,曝露部の長さが増加するため、各センサの応答が重畳した大きな応答が得られることが確認できた。さらに、それぞれのセンサ部を順次水素曝露していき、最後に全てのセンサを空気雰囲気に戻して同時に復帰させた場合、それぞれの操作に対応した応答特性が得られた。これらの結果より、分布型化学センサデバイスとしての動作特性を実証することができたものと考えられる。最後に、実環境下で想定される低温領域でのセンサ応答について調べた。その結果、-40℃という低温環境でも応答が得られるが、反応生成物である水の吸着や着霜等により異常応答が認められることを明らかにした。
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