平成21、22年度は783nmと763nmの2つの波長を用いた干渉計であったが、測定誤差をより小さくすることを目指して、今年度は778nmから765nm間の5つの波長を用いた。干渉信号の位相・振幅検出には、従来と同様に参照光に正弦波位相変調を与える干渉法を用いた。5つの波長で検出された位相は、波長の逆数に比例して変化し、その変化率が円筒内面の位置に比例することから、測定誤差を含む5つの位相の測定値に対し最小二乗法で近似直線を求め、その直線の傾きから内面形状を求めた。この際、干渉信号の振幅が小さい測定点の位相は大きな誤差を含むため、測定値から除外した。また、ある波長の位相が他の波長の位相から求めた最小二乗近似直線上の値と大きく異なる場合があり、かつすべての測定点でほぼ一定値だけ異なっていることを他の波長の位相と比較することから判別できたので、このようにある波長だけで一定値の測定誤差が生じている場合は、この一定値を測定値に加えて測定値を補正した。以上の5波長を用いる方法により、2つの溝を含む内面形状測定を行い、溝間隔は339μmで溝深さ55μmと5.3μmの測定結果が得られ、繰り返し測定誤差は溝部分に対し0.8μm、平坦部に対し0.3μmであった。2波長の場合の溝部分に対する繰り返し測定誤差は1.2μmであったので、5つの波長を用いることによって高精度の測定が実現されたことになる。そこで、従来の測定物体は内径3mm、長さ3.5mmの流体軸受けであったが、より小さな円筒物体として内径2.5mm、長さ2mmの流体軸受けについて、円周方向に沿っての内面形状を5つの円周方向の位置で測定することができた。
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