本研究では、EBG(Electromagnetic Band Gap)構造を持つ薄板状の電波吸収体を用いて、吸収される電波強度の板面上での2次元分布を計測することを目的としている。 本年度は、まずEBG構造により高周波電波(平面波)が吸収されるメカニズムを解析した。EBG構造の電気的等価回路を導出し、電磁界シミュレーションと比較することで、吸収に関係するパラメータを検討した。その結果、EBG構造により決まるL及びC成分、表面に配置した抵抗及び可変容量ダイオード、さらには基板の損失が吸収量に与える影響を明らかにした。次にその結果を用いて、電波を効率良く吸収できる小型EBG板を設計・試作した。35cm×37cmで厚さ2mmの基板上に17×18=306個のマッシュルーム型セル(2cm角)を2次元状に配置した。電波暗室にて数GHz電波の吸収実験を行い、シミュレーション通り10~15dB程度の吸収量が得られることを確認した。 一方、EBG板表面の抵抗で吸収された電波の電力を計測するための回路を設計・試作し、EBG板の裏面に8×8=64点の計測回路を配置した。計測したデータはA/D変換されてPCへ転送され、画面上に2次元電波強度分布のカラーマップが約1/30秒毎に表示されるようにした。電波暗室にて、標準アンテナから放射された高周波電波分布の計測実験を行い、ほぼ理論と矛盾のない電波強度分布を計測できることが確認された。 来年度は、空間的に不均一な分布を持つ高周波電波に対するEBG板の吸収特性を解析し、電波分布の計測精度を定量的に評価する。また、サイズ60cm×60cm程度で16×16=256点の計測点を持ち、最速1msec程度で電波強度分布を読み出すことのできる電波強度分布リアルタイム計測装置を設計・試作する予定である。
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