研究概要 |
本研究では、EBG(Electromagnetic Band Gap)構造を持つ薄板状の電波吸収体(EBG電波吸収板)を用いて、吸収される電波強度の板面上での2次元分布を計測することを目的としている。 本年度は、昨年度に引き続き、EBG構造により高周波電波が吸収されるメカニズムを解析した。特に垂直入射平面波に対するEBG電波吸収板の電気的等価回路を厳密に導出し、表面に配置した抵抗及び可変容量ダイオードが吸収量の周波数特性に及ぼす影響を定量的に解析した。その結果を電磁界シミュレーションと比較することにより、等価回路の妥当性を確認した。また、ダイポールアンテナから放射された球面波がEBG電波吸収板に入射したときに計測される2次元電力分布を、斜め入射の平面波遠方界近似の下で理論的に求めた。 一方、347mm×347mmの基板表面に33×33=1089個めマッシュルーム型セル(lcm角)を持ち、700MHz~2,7GHzの周波数範囲を吸収可能なEBG電波吸収板を新たに設計、試作した。吸収性能の実測を行い、等価回路解析及びシミュレーションと矛盾のない吸収量の周波数特性が得られることを確認した。さらに、表面に入射した垂直及び水平偏波の分布をそれぞれ検出できる電力計測回路をEBG電波吸収板の裏面に配置(8×8=64点)し、昨年度試作した電波強度分布リアルタイム計測装置に組み込んだ。ダイポールアンテナ及び携帯電話から放射される電波(球面波)の実測を行い、電波強度分布及び偏波計測の基本的性能を確認した。 来年度は、空間的不均一分布を持つ電波に対するEBG電波吸収板の電波吸収・計測性能の解析を行う一方で、新たに位相及び任意偏波の計測手法を検討し、電波強度分布リアルタイム計測装置の総合的な性能評価を行う予定である。
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