赤血球を水に懸濁すると、細胞膜に穴が開き、ヘモグロビンなどの内容物が放出される(溶血)。この穴のサイズや細胞当たりの数、穴の修復過程についてはまだ良く分かっていない。溶血した赤血球(ゴースト)懸濁液の誘電率を広い周波数領域に渡って測定すると、未損傷の赤血球では観測されない、誘電緩和過程(.-緩和)が低周波側で見つかっている。しかし、電極分極現象のため低周波測定が困難となるため、.-緩和についての追試報告はほとんどなく、詳細な性質やメカニズムは不明のままである。この研究では、電極分極の影響が少ない電極配置を考案して、ゴーストの.-緩和を詳しく調べた。測定された.-緩和の性質は、穴が一つ開いた球形細胞モデルによる数値計算結果と良く合い、穴が.-緩和を引き起こしていることが明確になった。また、穴のサイズを.-緩和から見積もった。
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