研究初年度では、マイナーループによる磁気特性評価と材料の劣化事象との関連性を実証試験で確認し、オンサイトで実現可能な材料評価法の確立に向けた新技術の確立と実施に向けた技術課題の抽出を行った。本年度においては、欠陥発生箇所の状況推定と変化の予測診断を行なうシステムの構築への準備として下記の手順で研究を実施した。 (1)統計量にもとづく磁気材料経年劣化評価法の計算的検討 (2)疲労試験材料に対する磁気異方性の検出感度の実験的検討 (3)遠隔監視のためのセンサネットワーク構築の準備調査 その結果下記の研究成果を得た。 (1)に関する成果:マルコフ連鎖モンテカルロ法による確率的逆問題解析の計算手法を提案し、材料劣化パラメータに関する統計的信号処理を行う非破壊評価法の有効性を検証した。 (2)に関する成果:鉄鋼材料の応力による劣化を磁気特性で評価するために、引張り試験を施し、塑性歪みを有するSS400を試験材として引張り方向と平行な磁気特性を調べた。その結果、歪みの増加に関して、保磁力とは一定の関係がみられず、一方飽和磁束密度、残留磁束密度については強い相関関係が認められた。またバルクハウゼンノイズについては、そのゆらぎのエネルギーとの強い相関関係を確認した。 (3)に関する成果:最終年度の研究に向けた準備として、センサネットワークの構築についてソフトウエア・ハードウエア両面から検討を行った。センサの配置方法に関する計算手法の検討およびデータ取得のための切り替え機器(マルチプレクサ)の試作を行った。 以上の成果により最終年度の研究実施に向けた準備が整った。
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