研究概要 |
研究初年度では,マイナーループによる磁気特性評価と材料の劣化事象との関連性を実証試験で確認し,オンサイトで実現可能な材料評価法の確立に向けた新技術の確立と実施に向けた技術課題の抽出を行った.研究次年度においては,欠陥発生箇所の状況推定と変化の予測診断を行なうシステムの構築の基盤整備を目的として研究を実施した.疲労試験材料に対する磁気異方性の検出感度の実験的検討においては,鉄鋼材料の応力による劣化を磁気特性で評価するために,引張り試験を施し,塑性歪みを有するSS400を試験材として引張り方向と平行な磁気特性を調べた.その結果,歪みの増加に関して,保磁力とは一定の関係がみられず,一方飽和磁束密度,残留磁束密度については強い相関関係が認められた.またバルクハウゼンノイズについては,そのゆらぎのエネルギーとの強い相関関係を確認した.研究最終年度においては,2年間に得られた知見を整理し,磁気センシングとシミュレーションを組み合わせた材料経年劣化診断に関する状態監視技術の実機適用可能性に関する研究を実施した.これまでの成果を通じて明らかとなったのは,材料の応力や歪み状態に敏感に反応することが知られているバルクハウゼンノイズ(BHN)や保磁力などの磁気特性の定量的な評価によって応力と材質両方の情報を同時に測定しうる総合的かつ実用的な非破壊評価が可能であることが明らかとなったことである.そこで,鉄鋼材料の経年劣化評価においては常時監視を行うことで過去の検査履歴と現在の測定値の変化を調べる傾向監視を行うことを目的として,応力を付加して歪みを発生させた材料(SS400)のBHNと保磁力の測定データから,ファジィ推論エンジンを用いることで劣化レベルの評価を行うことで劣化レベルの傾向監視を実現する方策についてその有効性を検証した.
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