前年度が得られた電磁誘導型音源と振幅相関合成法を併用した地下埋設物の三次元映像化探査方法の横方向探査範囲についての研究成果を日本応用物理学会欧文誌(Japanese Journal of Applied Physics)に発表した。 今年度では、主に受波器アレーの設置方法について検討を行った。今まで用いたクロス型受波器アレーの配置では、12個の受波器の中6個ずつの受波器が同一直線上に集中するため、この直線を軸とした円周上に虚像が現れやすくなる問題がある。この問題は、特に複数埋設物の探査など受信信号が複雑になる場合、映像化結果に虚像が現れやすく、地下埋設物の判断が困難となる。この問題点を改善するため、音源を中心に12個の受波器を円形状に配置する円形型受波器アレーを提案した。 まず、2種類の受波器アレーを用いた場合での横方向分解能をシミュレーションより比較検討した。その結果に基づき、同等な横方向分解能が得られる開口幅1.8mのクロス型と開口幅1.2mの円形型受波器アレーをそれぞれ用いて、埋設物の存在する円周上の虚像について検討した。埋設物からの反射信号のみを考慮したシミュレーションでは、すべての受信出力の加算結果を有効映像化レベルと定義し、2種類の受波器の配置方法による虚像の出現可能性について比較検討した。その結果、埋設物の存在する円周上において、クロス型受波器アレーを用いた場合に現れる高い有効映像化レベルは、円形型受波器アレーを用いることで削減できることが確認された。 さらに、複数の埋設物が含まれたモデル砂槽を用いて探査実験を行った。その結果、クロス型受波器アレーを用いた場合、6個ずつの受波器が設置されている直線を軸とした円周上付近に虚像が現れていたが、円形型受波器アレーを用いることでそのような虚像が減少した。したがって、円形型受波器アレーは、クロス型受波器アレーの対称性による虚像問題の改善に有効であることを明らかにした。
|