研究概要 |
本研究の目的は、自動車の消音管(マフラー)から出る排気音を用いて、自動車の後方にある障害物を検知するためのリアソナーを実現することにある。すでに今年度までに、可聴音域での定在波を用いた距離推定については、送信音としてインパルス音、(振幅が一様、位相がランダムな)帯域雑音、白色雑音について有用性を確認している。 今年度は以下のような成果が得られた。 1.リニアチャープ信号を送信音とした場合についても、同じ原理により距離推定が可能であることを理論的および実験的に示した(英慎平他、電気学会論文誌C,129巻,pp.2027-2033)。これにより、リニアチャープ信号であれば、ほぼリアルタイムに距離推定が可能であり、マイコンへの実装も可能と思われる。 2.従来、推定値は常に真値より少し小さい値が得られた。これはスピーカボックスの物理的大きさによるものである。この問題点を改善するために、スピーカ-対象物-マイクの幾何学的配置を考慮して推定値の補正を行なった(N.Nakasako et al., Proc. of ITC-CSCC 2009(pp.580-583), S.Hanabusa et al., Proc. of APSIPA ASC2009(pp.237-240)。これにより、自動車のマフラーなどの音源を利用する場合についても、距離の推定値の補正が可能と思われる。 3.最終的な目標が実音場への応用であることを考慮して、予備実験を多数回行った。そのため、マイクロホンアンプ、ワークステーションなどをフル活用した。また、観測データの採取、データ整理などでは、アルバイトが大いに活躍してくれた。現在、音声や環境音でも距離推定ができないか確かめている段階であり、さらに提案手法をマイコンに実装できないか試作中である。 以上の成果を踏まえて、平成22年度以降の自動車の排気音を用いたリアソナーの開発につなげたい。
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