研究概要 |
本研究の目的は、自動車の消音管(マフラー)から出る排気音を用いて、自動車の後方にある障害物を検知するためのリアソナーを実現することにある。すでに昨年度までに、可聴音域での定在波を用いた距離推定については、基本的な性能は確認できており、スピーカ、対象物とマイクロホンの幾何学的配置による推定誤差を低減する方法についても開発した。また、最小探知距離よりも短い距離を測定するための方法も提案している。今年度は以下のような成果が得られた。 1.本推定法は観測信号にフーリエ変換を2度施す簡単な手法であるが、実音場では観測雑音と測定系の影響により距離が正しく測定できない場合がある。そこで、いくつかの対策法を提案し良好な結果を得た(M.Nakayama et. al., IEICE Trans. Fundamentals, Vol.E94-A,pp.1638-1646.中山他、電子情報通信学会論文誌A,第J94巻,pp.676-679.中山他,電気学会論文誌C,131巻,pp.1864-1870)。 2.提案手法は音を使って対象物までの距離を測定する方法であるが、簡易な立体音場システム(中山他,電子情報通信学会論文誌A,第J94巻pp.313-322)あるいは遠隔会議システム(M.Nakayama et al., Proc.of INTER-NOISE 2011(CD-ROM収録のpp.1-6))の構築への応用の可能性を示した。いずれも本手法を用いて人間までの距離を求めている。 3.提案手法では、送信波と対象物からの反射波の干渉を利用しているが、通常は音源あるいはマイクロホンからも反射が起こる(多重反射)。多重反射の起こっている観測音に提案手法を適用すると、音源までの距離を求めることもできることを示した(N.Nakasako et al., Proc. Of INTER-NOISE2011(CD-ROM収録のpp.1-6))。 4.最終的な目標が実音場への応用であることを考慮して、屋内外での実験を多数回行った。そのため、昨年度以前に購入した機器やパソコンなどをフル活用した。また、観測データの採取、データ整理などでは、アルバイトが大いに活躍してくれた。
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