研究概要 |
通信インフラ整備に伴い,ビル間通信やラスト1マイル問題の解決手法として注目されている空間光通信(FSO : Free Space Optics)網を利用して,広い領域の地表から発生する二酸化炭素,メタンなどの温室効果ガスの接地境界層への輸送量(ガスフラックス)を無侵襲かつ実時間で測定できる計測システムを提案し,そのプロトタイプを運用することで,提案手法の実効性と問題点を明らかにすることを当該研究は目的とし、「(1)通信に支障をきたさない最適な吸収線の選択とその条件」の確定,「(2)通信容量とガス濃度計測精度の関係」の詳細な確認,そして「(3)波長多重通信方式による異種ガス計測の可能性」「(4)空間多重通信方式によるガスフラックス計測の可能性」を明らかにし,通信と計測を統合した新たな計測法の確立を図ろうとしている. 平成21年度は,開発中の空間光通信・ガス濃度同時計測システムの試験運用を行い,特に通信効率に支障をきたさない最適なガス吸収線を選択し,そのための条件を明らかにしようとした.ガス濃度の計測原理は赤外レーザ光線のガス分子による共鳴吸収量の抽出であるため,選択する吸収線の吸収係数に因っては,受信光パワが極めて減少し,通信に障害を与える可能性がある.提案開発中のシステムは,通信距離数100mから1kmを想定し,副搬送波を用いた,BPSK方式を採っている.現状では通信レート20Mbps,副搬送波周波数は400MHzである.当該年度では,前述の条件の下で,通信距離に対する通信使用におけるS/N,C/Nの関係とガス濃度計測におけるS/Nの関係を計算機シミュレーションし,最適なガス吸収線の条件を明らかにした.また,受信光強度,および,ガス吸収量の変動と通信光路上の大気擾乱の相関を明らかにするため,送信点,中間地点,受信点の3点の風向風速を3台の超音波風速計で計測するシステムの開発を行った.
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