研究概要 |
通信インフラの整備に伴い,ビル間通信やラスト1マイル問題解決の一手法である空間光通信(FSO:Free Space Optics)網を利用して,広い領域の地表から発生する二酸化炭素,メタンなどの温室効果ガスの接地境界層への輸送量(ガスフラックス)を無侵襲かつ実時間で測定できる計測システムを提案し,そのプロトタイプを運用することで,提案手法の実効性と問題点を明らかにすることを目的とし,「(1)通信に支障をきたさない最適な吸収線の選択とその条件」の確定,「(2)通信容量とガス濃度計測精度の関係」の詳細な確認,そして「(3)波長多重通信方式による異種ガス計測の可能性」「(4)空間多重通信方式によるガスフラックス計測の可能性」を明らかにし,通信と計測を統合した新たな計測法の確立を図ろうとした. 提案のシステムは,通信距離数100mから1kmを想定したBPSK方式を採っている.平成22年度は,1.6μm帯半導体レーザを光源としたハードウエアの設計および製作に取り掛かったが,目標性能が得られず,その点検,評価を経て,再度設計製作の作業に移ったところで研究期間が終了した.そこで,平成23年度の前半において,前年度の未決項目を引き続き追及し,1.6μm帯において,通信と温室効果ガス(メタン)濃度計測の同時運用の検証データを得ることができた。これを受けて,2.0μm帯レーザの導入を行い,当該レーザ素子によるデータ取得も試みた. また,先の主要ハードウエアの製作と並行して行ってきた,測定空間(屋内,屋外)の湿度,二酸化炭素の濃度等の対照データを取得するための実験環境の整備及び,計測システムの構築についても,当初の計画と鑑みて不足を含んでいたため,湿度計測モジュールを構築すると共に,湿度の長時間測定において信頼のおける静電容量式温度・湿度計の測定結果をデータロガーに記録するシステムの構築を行った.
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