| 研究概要 |
本研究では,連続時間信号に対する高速リフティングを用いた制御系の解析・設計をむだ時間系,サンプル値系に対して展開すること,ならびに,類似の考え方を離散時間信号に対しても適用する方法を構築してロバスト制御の新たな視点を提供することを目指している.本年度の研究成果の概要は以下の通りである.まず,むだ時間系に対して,これまでに行ってきたモノドロミー作用素の準有限ランク近似に基づくスペクトル半径近似計算法をベースとして,従来の安定解析のみの研究をディジタル制御系の設計に拡張した.モノドロミー作用素が,連続時間むだ時間系を離散時間的な視点で眺めるものであるという特徴を活かし,離散時間制御器を含む場合の安定解析法へと拡張した後,さらに制御器設計までの拡張を論じたものといえる.サンプル値系に関しては,ノルム有界な不確かさに対するロバスト安定解析・制御が盛んに研究されている一方で,ポリトープ型の不確かさを対象とした研究はあまり進んでいない.この点に関して,不確かさを含んだサンプル値系の遷移行列をリフティング表現に基づき作用素の合成により表現した上で,その作用素に対する高速リフティングや準有限ランク近似の適用を通して,近似的にその遷移行列を離散時間系の遷移行列としてよりよく近似し,さらに伸張型LMIを利用して安定解析を行う方法を明らかにした.離散時間系への拡張については,とくに静的な非因果的周期時変スケーリングが持つ能力を従来の動的な因果的時不変スケーリングとの関係において明らかにすることを目標に研究を進めた.リフティングのタイミングに関するセパレータのシフト不変性という概念と,静的な非因果的周期時変スケーリングに対するシフト不変化という操作を導入し,これらが上記の目的の研究において非常に重要な基本的概念となりうることを明らかにした.
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