研究概要 |
本研究は,スーパバイザ制御など離散事象システム理論に基づく,セキュアシステムの設計法の確立を目的としている.まず,離散事象システム理論の枠組みにおいて,情報流の秘匿性の概念を定義した.そして,有限オートマトンモデルを用いた,秘匿性検証のためのアルゴリズムを開発し,その計算量の理論的解析を行った.検証により,与えられたシステムにおいて秘匿性が保証されないと判定された場合には,スーパバイザと呼ばれる制御器により,システムの振舞いを制限することで,秘匿性を保証するような制御問題を考察した.その成果として,システムの動作の制限を最小にするという意味での最適性は保証されないが,有限ステップで計算可能なスーパバイザの設計アルゴリズムを開発した. また,離散事象システムの秘匿性の概念は,ある性質を満足する事象列がシステムにおいて生起したか否かを,観測者は出力シンボル列からは決定することができない,ということを意味している.そのため,秘匿性の問題は,特定の事象列の生起の検出,予知に関する離散事象システムの診断問題と密接な関係がある.そこで本研究では,複数の診断サイトによる離散事象システムの分散型診断についての考察も行った.そして,複数の診断サイトにより,特定の事象列の生起の検出,予知がそれぞれ可能であるための必要十分条件を導出し,検出,予知を行う診断アルゴリズムを開発した. これらの成果は,セキュアな離散事象システム設計に関する基礎理論の構築に貢献するものである.
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