| 研究概要 |
本研究の目的は,従来不可能だった大規模複雑非線形系の制御を実現するために,非線形Receding Horizon制御(RH制御)の計算量を今まで以上に低減することである。非線形RH制御の実時間アルゴリズムであるC/GMRESでは,各サンプリング時刻で連立1次方程式を1回解くのみで最適制御入力が更新できる。したがって,計算の大部分を占める連立1次方程式のサイズを低減できれば計算量も減らすことができる。また,実際の制御ではシステムの初期状態がある程度限定されている場合が多いため,その事前情報を利用することも考えられる。そこで,オンラインでの制御に先立って,想定される初期状態からオフラインでシミュレーションを行い,その時間応答を解析することで最適制御入力を少ないパラメータで表現し,オンラインで解く連立1次方程式のサイズを減らすことを検討した。そのための方法として,オフライン・シミュレーションで得られた最適制御入力の時系列行列に特異値分解を適用し,制御入力の時系列を表す正規直交基底から重要度の高い基底を取り出した。それらの基底を用いて解くべき連立1次方程式を変換し,そのサイズを低減した。そして,数値シミュレーションによって,提案手法と従来手法の計算速度および計算精度を比較した。その結果,シミュレーションの応答はほとんど変わらず,計算速度の向上が見られた。また,用いる基底の数を変えることによって計算速度と計算精度とのトレードオフが可能なことも分かった。
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