研究概要 |
1. 物理的な拘束条件が絡んだ場合: 現実には拘束条件が存在する.本研究では空間を歪める考え方を用い,状態空間を歪めてあたかも無拘束かのような空間(擬似空間)を創ることを試みた.すなわち,拘束条件のある最適制御問題を,拘束条件のない問題として扱う考え方である.状態変数および入力変数のいずれの場合も取り扱いその考え方を整備した.その効果を確認するため,入力拘束条件付最適制御問題に焦点を当て,擬似空間上のハミルトン・ヤコビ方程式を導出し,その数値解を関数の形で求めた.なお,入力空間を歪めた場合,ハミルトン・ヤコビ方程式による入力関数の導出は困難とされるが,新たな工夫を凝らした.以上により,本手法の考え方の正当性を検証した. 2. 状態点がジャンプする場合: 状態点が不連続にジャンプし,さらにジャンプ時刻が未知な場合の問題は,連続量と離散量が混在するハイブリッド最適制御問題として知られている.本研究では状態点のジャンプ現象を連続量の一部であると考えた.すなわち,状態空間を平面と考えるとき,その平面の一部を切り取り,残りの部分を繋ぎ合わせる考え方である.この考え方を利用し,状態点がジャンプする場合を含む正準形式最適制御問題の定式化を試みた.しかし,ジャンプ条件によっては状態変数の次元が非常に大きくなることが明らかになった.この事実に基づき,考え方の再考を行い次年度の成果につなげる. 3. 統一理論の構築: 上述の1.および2.の研究状況を考慮し,正準形式による最適制御問題の定式化の前段階として,ディスクリプタ形式による最適制御問題の定式化およびその数値解法の確立を試みた.ディスクリプタ形式は,制御対象に関し表現能力に優れているといわれる.その表現能力を参考にして,正準形式による統一理論構築の可能性を検討した.
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