まず、前年度で提案したヒステリシスを入力側に含む未知の多入出力線形システムのロバスト非線形制御法をさらに検討した。具体的には、理論の厳密性や計算機によってリアルタイム処理の可能性などの視点から改良し、計算機シミュレーションにより、改良手法の妥当性や実用性などを確認し、各設計パラメータの選択基準に関するガイドラインを作成した。 そして、より望ましい制御応答を得られるように、XYナノサーボステージの制御実験を引き続き行った。改良された制御手法を積極的に応用することにより、XYナノサーボステージの制御応答をさらに改善した。 さらに、外部条件を変えながら、実験により提案手法のロバスト性、実用性及び有効性を確認し、提案手法の利点・欠点を明らかにし、より望ましい制御応答を得られた。 理論面において、本研究はヒステリシスを含むシステムの制御という難問を何処まで解決できるか、またシステム制御理論をどの程度拡張できるか、という興味深い研究である。 応用面において、本研究の目的を達成することにより、各種超高精密微動位置決め装置の性能がさらに向上でき、より高質な成果が得られる。また、ヒステリシス特性を持つ超磁歪/圧電材料などのスマートマテリアルの有する速応性・高エネルギー密度・高キュリー温度・長寿命などの諸特性を生かす応用領域がより広くなる。さらに、本研究の理論成果はヒステリシス現象を含む従来の制御システムにも応用でき、よりよい制御性能が得られる。
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