研究概要 |
産業廃棄物の使用を増大させつつ,CO_2削減も可能とし,しかも健全な社会資本を構築することが可能な性能を有するセメントの最適化設計はいまだ確立されていない.セメント産業においては,CO_2発生量中に占める原料由来のCO_2量が主体であるため,混合材を利用し,混合セメントとし,クリンカー製造量を低減させることが最も効果的である.混合材の利用は,クリンカーの製造量を低減するため,セメント製造における廃棄物の増大と混合材の利用によるCO_2削減は矛盾することになる.しかし,廃棄物である石炭灰,製鋼スラグおよび下水汚泥を原料に利用し,セメントを製造する際に,C_3A量を現状の9%から12%に増加させ混合材を使用すると,廃棄物を現行の243kg/tから,混合材10%の場合には,300kg/t,20%使用でも266kg/tと増加させることが可能と試算できる(現状の廃棄物として報告されているセメント1t当り,混合材を含めると436kgは,高炉セメント用の高炉スラグが含まれている). 廃棄物の増大のために,間隙相量特にC_3A量を増加させると,C_3A量を現状の9%から12%とした場合には,水和熱や強度発現性状は,現状のC_3Aを9%としたセメントの90%以上の性能を確保できるが,流動性が低下する.石灰石微粉末を利用することで、C_3A量を12%と増加させたセメントでも混合材量を10%とすることとで流動性を制御することが可能であり、現在市販されてセメントと同等な流動性の確保が可能なことを見いだした。また、産地の異なる石灰石により微粉末を製造し、石灰石の被粉砕性と流動性の制御の関係を明らかにし、流動性制御の観点からの石灰石の選定方法についても提案した。このように混合材を10%程度利用することで,廃棄物量を増加させ,CO_2削減もできるセメントの材料設計が可能であることを明らかにした.
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