研究概要 |
前年度までの研究において、廃棄物の増大のために,間隙相量、特にC3A量を現状の9%から12%とした場合には,水和熱や強度発現性状は,現状のC3Aを9%としたセメントの90%以上の性能を確保できるが,流動性が低下する.石灰石微粉末(LSP)を利用することで、C3A量を12%と増加させたセメントでも混合材量を10%とすることとで流動性を制御することが可能であり、現在市販されてセメントと同等な流動性の確保が可能なことを前年度までに見いだした。この際、廃棄物である石炭灰,製鋼スラグおよび下水汚泥を原料に利用し,セメントを製造する際に,C3A量を現状の9%から12%に増加させ混合材を使用すると,廃棄物を現行の243kgltから,混合材10%の場合には,23%,20%使用でも9%増加させることが可能と試算できることを明らかにしている.本年度の成果としては、流動性制御には遊離石灰量を増大させることも重要であることを明らかにした。さらに間隙相量としてC3AとC4AFの両方を増加させたセメントについて検討を加えた。C3Aを12%とし、C4AFを9から13%に増加させたセメントについて検討を行った結果、流動性は,セッコウを4%とLISP10%あるいはセッコウを3%とLSP15%を混和することで既存の普通セメントと同等まで改善できることを見いだした。また、材齢7日と28日における硬化体の全細孔量はほぼ既存の普通セメントと同等かそれより小さな値を示し、硬化体としても間隙相量の増加が悪影響を及ぼすことはないことを明らかにした。なお、断熱温度上昇量は普通セメントの場合より2~5℃上昇したが、セッコウを3%以上添加することで断熱温度上昇量の増加は2℃以内に抑えることができ、断熱温度上昇特性としては問題はないと判断した。以上のようなC3AとC4AFの両者を増加させたセメントでは、C3AとC4A:Fがそれぞれ9%の既存の普通セメントに比べて、セッコウを4%とL,SP10%でCO2排出を9%削減,廃棄物使用量を33%増加でき、また、セッコウ3%添加し、LSPを15%混和したセメントではCO2排出を14%削減,廃棄物使用量を25%増加できることを明らかにした。
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