研究概要 |
セメント系材料の様々な画像からの空間情報取得とその評価に主眼を置き,ミクロレベルの電子顕微鏡から,コンクリートの維持管理業務に関係して取得されるコンクリートコア断面レベルの等倍,低倍率画像まで,空間統計学に基づいた統一的な手法で,空間構造を定量的に評価した.さらに,そのようにして得られたマルチスケールな空間統計量とコンクリートの物性との関係を検討した.本研究にて得られた主な結果は以下のとおりである. 1.骨材周囲の遷移帯が物質移動経路に及ぼす影響は明確ではなく,ペーストマトリックスの屈曲性の影響も認められない.よって,物質移動はバルクセメントペースト相自身の微視的な特性に強く影響を受ける. 2.点過程統計量はセメントの水和反応過程の特徴を理解するのに有効な手段であり,水セメント比の相違により毛細管空隙空間点の分布構造の変化の傾向が異なることが示された. 3.粗大毛細管空隙は物質の連続した移動経路になりうる.しかし,水セメント比が著しく低下した場合は,物質移動特性を粗大毛細管空隙の空間構造だけで理解することはできない. 4.2次のステレオロジー関数により,RVE寸法が示された.また,本研究にて提案するエッジ法を用いれば,骨材は適切に抽出され,その2次元画像から,3次元粒度分布も推定可能である. 5.セメントの水和反応過程の汎用的なシミュレーショツールであるCEMHYD3Dは,画像情報と同じ空間構造を再現することは理論上不可能である.したがって,実際に観察された電子顕微鏡像の特徴を反映するという考え方は正しくない. 6.空間統計量はセメント系材料のマルチスケール空間構造を適切に評価し,その値はコンクリートの巨視的な物性とも密接に対応する.
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