研究概要 |
本研究では,再生骨材コンクリートの強度低下メカニズムの解明に向け,高吸水率の再生骨材とペースト間の水分移動現象を実験的に明らかにすることを目的とした。まず,含水状態および養生条件の異なる再生骨材コンクリートの強度特性から間接的に骨材とペースト間での水分移動について考察した。その上で,高吸水率骨材と周囲のペーストを模擬したモデル供試体を用い,骨材とペーストの境界近傍における物性の変化について検討した。その結果,以下のような成果が得られた。 表乾状態および絶乾状態の再生粗骨材を用いたコンクリートよりウェットスクリーニングして得られたモルタルの強度を比較した結果,ほぼ同じであった。これより,再生骨材中の水分が練混ぜ時にモルタルマトリックスへ滲出し,見かけ上,水セメント比を増大させることが明らかになった。 (2)表乾状態および絶乾状態の再生粗骨材を使用したコンクリートを封絨養生した場合,7日強度はほぼ同等であったのに対し,28日強度では表乾状態の再生粗骨材を用いたコンクリートの方が大きくなった。このことから,再生粗骨材中の水分が養生時にもモルタル部に移動し,自己養生効果を発揮することが推察された。 (3)高吸水率レンガを用いたモデル供試体をCTスキャナで観察した結果,表乾レンガを用いた場合にセメントペーストの境界近傍においてGL値の低い部分を確認した。これより,高吸水率骨材を使用したコンクリートにおいて骨材近傍のセメントペースト部には,密度の低い部分が形成されることが推察された。 (4)高吸水率レンガを用いたモデル供試体のビッカース硬度を測定した結果,レンガとセメントペースト境界近傍において,ビッカース硬度の低い領域が確認できた。このことより,高吸水率骨材使用コンクリートにおいて骨材近傍のセメントペースト部の強度が低下することが推察された。
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