研究課題
コンクリート構造物に使用するセメントとして混合セメントの利用を拡大していくことは、我が国の資源の有効利用およびセメント製造過程におけるCO2削減に極めて有効である。これを実現するためには、混合セメントを建築物に積極的に利用していくことが重要であると考えられる。そこで本研究では、今年度、鉱物組成を調整したクリンカを用いた高炉セメントに着目し、それを用いたコンクリートの自己収縮特性について実験により把握し、さらに既往の自己収縮予測式の適合性について検討を行った。今年度の実験結果から、以下のような事項が明らかとなった。クリンカのエーライト量を増加させた場合、初期の自己収縮量は変化しないが、材齢1ヶ月以降の自己収縮の増加が大きくなった。高炉スラグを20%混入することにより自己収縮は長期にわたり増加し、最終値は2倍以上となった。またこの傾向は、クリンカのエーライト量が58~69%の範囲で同様であった。一方、エーライト量が多い高炉セメントを用いたコンクリートは、普通ポルトランドセメントや高炉セメントB種と異なり、高温条件下での自己収縮がそれほど増大しない結果となった。以上の検討結果から、コンクリートの自己収縮ひずみを予測するためには、クリンカの鉱物組成が自己収縮ひずみの経時変化に及ぼす影響を評価する必要がある。例えば、エーライト量を変化させたクリンカを用いた高炉セメントを実用化する場合には、クリンカ組成、高炉スラグ分量、温度条件の相互作用について明確に評価する必要がある。特に、エーライト量はセメントの初期強度の発現に影響があるので、エーライトの水和反応に伴うセメント硬化体組織の緻密化が自己収縮と密接に関連することが予測され、両者の関連を定量的に評価することが重要であることが示唆される。
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コンクリート工学年次論文報告集
巻: Vol.33, No.1 ページ: 497-502
RILEM Conference on Advances in Construction Materials through Science and Engineering
巻: (CD-ROM)