最終年度は、引き続き繊維素材単体の引張試験とモルタル素材と補強繊維素材とのサンドイッチ供試体による接着強度の引張試験を行い、引っ張り強度と変形(伸び)性能を測定した。これらの物性は耐震補強に必要な断面積を決めるために必要になる。また植物由来の繊維だけでなく一般的なひも・ネット素材が補強につかえるかを判断するために、これら組構造の降伏及び終局時の耐震性能を評価する簡易な評価式を提案した。式の信頼性は研究初年度に行った曲げ試験結果により確認した。 接着に関しては、アドベブロックの間にモルタルと補強繊維をサンドイッチした小型の供試体を作成し、供試体が乾燥した後に、繊維素材の引張張試験を行い、繊維を引き抜くことで測定した。最終年度は、モルタルの繊維補強の有無と用いる繊維補強の素材により、どの程度の引っ張り強度が得られるかを主に測定した。これらの値は上記性能評価式で用いる。 バングラディッシュ工科大学のイスラム氏には海外共同研究者として参加してもらい、埼玉大学で得られた結果とバングラディッシュで行なっている暴露試験の結果を持ち寄り、研究のまとめとして各補強方法の評価と最も効果的な補強方法の選定とを行なった。その結果、繊維素材は断面寸法を確保すれば、十分な強度を有すること、繊維補強漆喰はネット素材固定効果を有するが、終局時まで耐えるのには十分とは言いがたいこと、改善のためには部材を貫通するひも等の固定具を使えばいいことという結論が得られた。
|