社会基盤施設の耐震設計においては、性能設計の概念が広く導入されるようになっている。本研究では、地震災害における様々な条件の不確定性を考慮した上で、性能設計に用いるための入力地震動の合成を目的とする。そのため、非線形系の入力地震動を合理的に表現するための考え方として、時間周波数特性の考え方を明示的に取り入れて、入力地震動を合成する手法の開発を行う。 初年度である21年度は、時間周波数特性を表現するための手法の検討としての、短時間フーリエ変換、非定常パワースペクトル、ウィグナー分布、実ウェーブレット変換、複素ウェーブレット変換、等の様々な手法の有効性を比較・検証した。時間周波数空間上での解像度、利便性、計算量、計算手法の安定性などを考慮した比較に基づき、本研究の目的に適切な方法としてウェーブレット変換を選定した。 また、選定された同手法を用いて、規定される地震動の特性に基づき時刻歴波形を合成する手法について検討した。非線形挙動をする構造系は、伝達関数を有しないため、収束計算を伴う近似的評価が必要となる。この際、時間周波数特性を用いて、周波数特性だけではなく時間的変化も考慮することで、高い精度で近似を可能とする手法を提示し、その性能を数値シミュレーションにより示した。 また、入力波や構造パラメタ等に不確定性がある場合に、合成された波形や観測された強震動記録の性能を定量的に比較するための手法として、構造物の非線形挙動を考慮した複数の指標を組み合わせて用いる手法を考案した。
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