研究概要 |
前年度に引き続き各要素モデルの改良と本研究のとりまとめを行った.前年度までに開発した数値解析手法を具体的な橋梁(福井県坂井市三国大橋)での測定結果と比較した.もっとも現在のところ浮遊粒子の桁面への付着量の推定が難しいこと,さらに浮遊粒子の粒度分布に関する情報が欠落していることから,付着量は絶対量ではなく相対量にとどまるものになっている。しかしながら,得られた結果は,桁の部位による相対的な付着量とほぼ一致するものになった.これにより,海洋面からの浮遊塩分粒子の発生,風による移流と拡散,さらに桁のまわりの局所的な流体解析による付着といった現象を,一貫した考え方で数値解析により予測する方法を提示することができた.一例を示したにすぎないが本研究の成果は今後の塩害予測に効果的な手法を与えるものと考えている.また,それと同時に,今後の数値シミュレーションの導入のためにはこれまで受け入れられてきた塩分量の指標,計測法についても一部再考すべきであると思われる.特に飛来塩分量の指標はタンク法が用いられることが多いが,これは風向や風速の影響を受けるために一般には使いにくい指標となっていることに注意しなければならない.さらに,浮遊粒子の固体表面への付着という古典的問題については今後も十分な検討を続けていかなければならない.いずれにしろ,本研究に示したフレームワークのもとで個々の要素の予測精度を上げていくことにより,これまで考えられなかった付着塩分量の数値シミュレーションを行うことができる.
|