研究概要 |
耐風設計で考慮すべき斜張橋ケーブルの空力振動現象には大きく分けて,降雨時に発生するレインバイブレーションと降雨を伴わないドライステートギャロッピング(以下DGと略する)に分けられる.前者に関しては,平成21年度にケーブルの表面形状とカルマン渦放出,抗力低減,水路との関係を明らかにした.平成22年度は,後者の発生メカニズム解明を試みた.過去の研究で,DGの発生メカニズムは,軸方向流や臨界レイノルズ数による影響等が挙げられているおり,両効果共カルマン渦の抑制に関連していることが示唆されているが,未だ不明な点が多い.本研究では,臨界レイノルズ数域に達するような高風速域での実験は困難なため,カルマン渦放出を抑制する目的でケーブル表面に種々の突起を付けた状態で,DGの発生メカニズムを検討した.平成21年度におけるケーブル表面形状の検討は,実際の斜張橋ケーブルへの適用を考えたものであるが,平成22年度における表面形状変化は,空力不安定現象のメカニズムを解明する目的で,カルマン渦放出のコントロールを試みたものである.本研究で使用したケーブル模型は,通常の円断面模型,スパイラル突起付き模型,直方体突起付き模型,縞状突起付き模型を用いた.円断面模型以外は,いずれもカルマン渦放出が抑制されているが,表面粗度による効果とスパン方向の剥離点変化による効果に分けられる.これらの模型を用いて風洞実験を行い,以下の知見が得られた. ・ 斜張橋ケーブルのDGを不安定化させる要因として,表面粗度による効果,軸方向流による効果が考えられる.一方,安定化させる要因としてはスパン方向の剥離点変化が考えられ,実際の現象は,これらの3つの要因が複雑に関連していると考えられる. ・ DGは,カルマン渦が抑制された状態で発生しているが,その発現風速はレイノルズ数ではなく,無次元風速に依存している可能性が明らかとなった.
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