研究概要 |
平成23年度は,斜張橋ケーブルのドライステートギャロッピング(以下DGと略する)について,その発生メカニズムを流れ場から解明すること,ならびに傾斜ケーブル表面が雨で濡れることが空気力学的にどのような効果を及ぼすのかを検討した. 平成22年度の研究で,DGに対して不安定化した縞状突起付きケーブルと安定化した通常の円断面ケーブルを用いて,傾斜ケーブル模型周りの流れ場をPIV解析することにより,DGの発生メカニズムの解明を試みた.縞状突起付きケーブルでは,カルマン渦放出が抑制され,抗力も低減し,臨界レイノルズ数域が容易に実現できる.PIV解析の結果,ギャロッピングの発生機構を2次元的に考察すると,臨界レイノルズ数域でカルマン渦が抑制された結果,剥離剪断層の曲率が小さくなり,楕円断面の後流域に低風速領域が形成されることにより,ギャロッピングが発生することが明らかとなった.従って,通常の円断面ケーブルにおいても高風速域(臨界レイノルズ数域)において,同様のメカニズムでDGが発生すると考えられる. また,これまでDGの発生メカニズムの一つと考えられていた軸方向流れは,傾斜ケーブル背後全体に存在することが判明し,ギャロッピングの発生の直接的な要因ではないことが示唆された.ただし,カルマン渦を抑制する効果はあるため間接的に関与しているものと考えられる. 降雨時の傾斜ケーブルの表面は,風向きによってはレインバイブレーションの発生要因である水路が形成されたり,水滴で濡れている状態になる.そこで本研究では,ケーブル表面の濡れが,空力的にどのような効果を及ぼすのかを調べるために,人工降雨下で種々の模型姿勢について空気力を計測した.結果的に,ケーブル表面の濡れによる顕著な変化は見られなかったが,設備の都合上,強乱流中での計測となったため,一様流中での検討も必要と思われる.
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