研究概要 |
流れに沿って配置された2円柱間に生じる空力振動をフィードバック制御により増幅させ,風力エネルギーを効率的かつ安定的に得るための新たな風力発電方式の実現に向け,制御ゲインと時間遅れの2つの制御パラメータのうち特に制御ゲインを中心に円柱応答特性に及ぼす効果を風洞実験により検討した. (1)応答増幅時には,制御ゲインが大きいほど,下流円柱の応答振幅が時間とともに高い増幅率で増大する.一方,応答抑制時には,比較的小さな制御ゲインであっても,ごく短時間で下流円柱の振幅が抑制された.また,増幅時と抑制時のいずれにおいても,制御開始から定常応答に至るまでに振幅が段階的に変化するケースが見られた. (2)応答増幅時には,下流円柱の振動周期は無制御時よりも増大する.この増幅後の振動周期を基準として0.8周期の時間遅れで制御すると,制御ゲインや風速に関係なく,下流円柱の応答が最大となる.なお,下流円柱応答が大きいほどその振動周期は固有周期に近づくことから,多くの場合,固有周期の0.8倍の時間遅れを与えれば,その制御ゲインの下で最大の応答振幅が得られる. (3)0.8周期の時間遅れで下流円柱応答が最大となるとき,その応答振幅は,同じ制御ゲインであれば風速に関わらずほぼ同程度の値になる,このことは,自然の風速変動下でも制御ゲイン一定の下で応答振幅を一定に維持可能であることを意味し,風速変動に対して安定した発電を保持できる可能性を示唆する. (4)下流円柱の応答振幅は制御ゲインにほぼ比例して増幅するものの,一定以上の制御ゲインでは増幅が鈍化し制御ゲインの限界値が存在した. (5)低風速域であっても,適切な時間遅れを与えれば,0.1程度の小さな制御ゲインで下流円柱に振動を励起でき,より大きな制御ゲインを用いれば,高風速域と同程度の大振幅まで増幅可能である.
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