研究概要 |
地球が数十億年の歳月を費やして石炭・石油として備蓄した炭素を,人類は生産活動のために等比級数的に大量排出し続け,地球温暖化の原因の1つとなっているとも言われている.1997年,COP3で2012年までにCO_2排出量を1990年に比して6%減少させる決議もなされたが,排出量は増加し続けている.2011年のCOP17では,京都議定書の延長措置が行われた上で,新たな排出量削減の模索が議題となった.我が国では,1993年の環境基本法の制定から,温暖化の防止,生物多様性の保全,循環型社会の構築などを中心とした少なくとも500年程度以上の持続的発展が可能な社会の構築が図られている. 社会資本整備においては,持続的発展を意識した開発や現有の社会基盤施設の維持管理など,資本投資の効率化や温暖化ガス排出量の削減,また,3Rを考慮した社会システムの構築が必要と考えられる.交通ネットワークが発達した今日では,橋梁構造物の役割は非常に重要となり,社会の持続可能性を維持するには,将来に負の遺産を残さない社会基盤施設の整備が必要である.本研究では,橋梁構造物における資源ストックとしての鋼重に着目して,鋼橋10種類,PC橋1種類を試設計し,それぞれのCO_2排出量,コスト,製品としての橋,寿命と鋼重をパラメータとして,抱絡分析法(DEA)と超抱絡分析法(SDEA)を適用して環境性能に関する改善案の検討を行い,その評価を試みた.解析結果からは,鋼を資源ストックとしてリサイクル性を評価すれば,PC橋とほぼ同一の環境性能が得られることが判明した.また,架橋地点に対して,適切な径間割,形式の選択が行われていれば,十分な環境性能が得られる結果となることが明らかとなった.また,本研究の方法は,具体的な改善案が提示可能なため,例えば,現在供用中の橋梁において,今後の維持管理計画を策定する一助にできる可能性も有と思われる.
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