研究概要 |
本研究課題は,近年発展してきたMPS粒子法を用いて,土石流を受ける砂防構造物に対する耐衝撃性照査法の確立を目指すものである.その内容は,(1)粒子法による固液混相流プログラムの開発および同手法による土石流荷重の評価,(2)粒子法による鋼およびコンクリート構造物の変形・破壊解析手法の確立,(3)土石流と砂防構造の衝撃連成解析手法の開発,に大別される. 平成21年度は,本研究課題で対象としている土石流段波モデルの荷重を計測する模型実験を行うとともに,本研究課題の中核となる粒子法を用いた固液混相流プログラムの開発を行った.模型実験では,軽石と水で構成した土石流モデルを斜面に沿って流下させ,軽石の初期堆積形状が土石流の流動形態や荷重特性に与える影響を調べた。その結果,初期条件によっては土石流の先頭部が大きく盛り上がる段波が発生することが確認された.固液混相流解析では,土石流中の礫を剛体でモデル化したMPS-DEMモデルを適用するとともに,剛体要素と床面の摩擦を考慮できるモデルを開発した.提案した手法を用いて実験結果のシミュレーション解析を行った結果,土石流モデルの段波発達過程や荷重特性をよく再現できた.従来,段波土石流を数値解析によって再現することは困難であると言われてきたが,MPS粒子法と個別要素法を組み合わせることで技術的な課題を克服できた.将来,本ソフトウェアを用いることで,実際の地形を考慮した土石流シミュレーションを行うことが可能となった. 一方,粒子法解析における圧力の不自然な高周波振動,および粒子法による固体のシミュレーション解析についても検討を行った.その結果,粒子法で用いるパラメータによって,圧力の振動や固体解析の精度が変動することが確認された.これらの課題については,今後も継続して検討を行う.
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