研究概要 |
平成22年度は,単杭を地盤に押し込んだ時,またその後繰り返しの水平載荷を受けた時の,杭と周辺地盤の変形挙動を観察および計測する手法の開発に主眼を置いて,研究を進めた。そのために,平成22年度の研究において作成した,半分割した杭体と地盤モデルを用い,一連の実験を行った。実験パラメータとして,砂地盤の密度(相対密度70%と90%),杭表面の粗度(滑らかな表面と砂を貼りつけた表面),水平載荷時の杭頭の鉛直荷重レベルを変えて,それらが杭および周辺地盤の挙動に与える影響を調べた。 地盤挙動の観察手法として,地盤の任意の位置に設置したターゲットの変位から,内挿関数を用いて,地盤の格子点における変位を計算し,さらにこれらの変位から格子点における地盤の鉛直,水平,体積ひずみを計算できる手法(プログラム)を完成した。 杭の載荷実験では,まず模型地盤にあらかじめ設置された模型抗の鉛直載荷実験を行い,鉛直荷重-変位関係を計測し,これから第1極限荷重と第2極限荷重を求めた。通常,現場での水平載荷実験では,鉛直荷重が作用しない条件で実施される。しかし,実際の地震や風荷重などの水平載荷を受ける際には,上部構造物の荷重(死荷重)が杭頭に作用している。鉛直荷重レベルが繰り返し水平載荷を受ける単杭および周辺地盤の挙動に与える影響を調べるために,模型実験においては,第1極限荷重の0,10%,20%,30%,50%,70%の鉛直荷重を載荷した条件で,繰り返し水平載荷を行った。載荷方式は,変位制御方式として,両振りで杭直径の1,2,3,4,5%までの水平変位を杭頭に与えた。杭頭荷重が0の場合,水平載荷時の鉛直変位は,ほとんど生じなかった。杭頭荷重レベルが大きくなるほど,水平載荷時の鉛直変位は増加した。滑らか杭と粗い杭の挙動を比較すると,粗い杭(摩擦杭)の沈下量は,滑らか杭に比べて,小さくなることがわかった。 本年度に開発したPIVシステムによって,鉛直および水平載荷時の杭周辺地盤の変位,変形,ひずみ分布を詳細に得ることができた。この成果は,群杭およびパイルド・ラフトの挙動に関する実験を予定しているH23年度の実験においても有効に利用できることが検証された。
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