研究課題/領域番号 |
21560520
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
亀井 健史 宮崎大学, 工学部, 教授 (30177597)
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研究分担者 |
志比 利秀 島根大学, 総合理工学部, 助教 (60311792)
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キーワード | 一軸圧縮強さ / 石炭灰 / セメント安定処理土 / 廃石膏ボード / 半水石膏 / リサイクル / 軟弱地盤 / 内部構造 |
研究概要 |
研究代表者は,半水石膏を添加したセメント安定処理土の一軸圧縮強さが半水石膏添加率と密接な関係にあり,この主要因として石膏添加率の増加に伴う乾燥密度やエトリンガイトの生成量の増加を指摘している.本年度は,上記配合例におけるAl_2O_3の不足を補うため,新たにリサイクル材料でかつAl_2O_3が比較的豊富な石炭灰を粘土に混入した地盤材料の耐久性(乾湿繰り返しの影響)の検討を試みた.その結果,半水石膏と石炭灰を添加したセメント安定処理土の一軸圧縮特性は,乾湿繰り返し作用に対する抵抗性が大きく,石炭灰・半水石膏添加率の増加に伴って強度変形特性の耐久性がさらに改善されることが明らかとなった.また廃石膏添加が締固め土の締固め特性と一軸圧縮強さやCBR値に及ぼす影響も検討し,今回対象とした地盤改良材の有効性を実証した.さらに半水石膏と石炭灰の添加率を変数としたセメント安定処理土の応力-ひずみ関係のモデル化も提案した. 一方地盤環境工学観点からは,化学的理論式に基づいたエトリンガイト生成の反応式からその最適配合比を求め,リサイクル材料(半水石膏,石炭灰,高炉スラグ)と微量の高炉セメントB種のみで開発した新たな地盤改良材に対してフッ素・ホウ素・六価クロムの溶出試験を行った.また,走査型電子顕微鏡による内部構造の可視化やX線回折試験によるエトリンガイトの代表される結晶構造の変化を比較検討した.その結果,今回開発したハイブリッド型新地盤改良材単体としての有効性を検討した.その結果,石膏からのフッ素溶出濃度がさらに減少し,新たな添加に伴って問題となる可能性があるほう素や六価クロムの溶出濃度も,土壌の環境基準を満たしていることを実証した.この原因として,エトリンガイト生成量の増加や内部構造の発達過程等の学際的観点から解明している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
半水石膏添加率と石炭灰添加率の違いがセメント安定処理土の一軸圧縮特性に及ぼす影響を明らかにし,この主要因として石膏添加率の増加に伴う乾燥密度やエトリンガイトの生成量の増加を指摘している.また今回対象とした地盤材料が乾湿繰り返し作用に対する抵抗性が大きく,石炭灰・半水石膏添加率の増加に伴って強度変形特性の耐久性がさらに改善されることが明らかとなった.さらに,廃石膏添加が締固め土の締固め特性と一軸圧縮強さやCBR値さらには三軸せん断特性に及ぼす影響も検討し,今回対象とした地盤改良材の有効性を地盤工学的観点から実証した.解析的な観点からは,半水石膏と石炭灰の添加率を変数としたセメント安定処理土の応力-ひずみ関係のモデル化も提案した. 一方地盤環境工学観点からは,化学的理論式に基づいたエトリンガイト生成の反応式からその最適配合比を求め,リサイクル材料(半水石膏,石炭灰,高炉スラグ)と微量の高炉セメントB種のみで開発した新たな地盤改良材に対してフッ素・ホウ素・六価クロムの溶出試験を行った.その結果,石膏からのフッ素溶出濃度がさらに減少し,新たな添加に伴って問題となる可能性があるほう素や六価クロムの溶出濃度も,土壌の環境基準を満たしていることを実証した. 以上要するに,本研究で開発したリサイクル材料のみによる地盤改良材は,現代社会が解決しなければならない循環型社会の構築に極めて有意であり,地盤工学と地盤環境工学両観点から優れた材料であることを実証した.本研究計画は予定以上に順調に進展しており,当初の計画内容はほぼ終了したと判断できる.また当初の予定した以上の成果として,実施工への適用性に関しても良い結果が得られた.さらに本研究の計画以上の研究成果が多く得られており,その内容は既に多くの国内外の学術論文業績として現れている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては,上記半水石膏を添加した地盤材料の耐久性を推進するため,その力学的特性に及ぼす凍結・融解の影響や昨年開発した新たな地盤改良材の超軟弱地盤への応用について検討できればと考えている.また,最終年度である本年度は,これまでの研究成果の総合的な取りまとめを行い,廃石膏の実務への適用性を推進するため適切な基準を提案できればと考える.本研究課題は,廃石膏ボードの増加,最終処分場の不足,およびその有効利用と循環型社気の構築には極めて重要な研究題目であり,世界的も注目されている研究であるといえる.
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