本研究は、三軸試験機による砂の液状化試験の際に、供試体に上向き浸透流を作用させることによって粒子沈降を防ぎ、密度が均一な条件のもとでの試験の実施を目指した。この実験で重要な点は浸透流を作用させる際に供試体下部からの供給と供試体上部から流出させる浸透水量を正確に同量として供試体の体積変化をゼロとすることである。この目的のためにピストン式の透水発生装置を作成し、ピストン内外圧差を適切にコントロールすることにより、間隙水の体積変化をキャンセルして、供試体の等体積条件を正確に保つための手法を考案した。また、供試体に送水する管路内で過大な水頭損失・水圧差が生じないように、送水管路の大口径化や、それによって生じる管路の体積変化の補正のための制御プログラムを作成した。まず、この装置および制御手法を用いて、砂の供試体に対して等方圧繰り返し載荷試験を行い、過剰間隙水圧係数の時刻歴を検証することにより、十分に精度のよい等体積条件での繰り返し載荷試験を実施できることを検証した。その上で、この実験装置を用いて、供試体に粒子沈降をちょうど打ち消すだけの上向き浸透流を作用させた場合とさせない場合の2通りの繰り返し液状化強度試験を実施した。浸透流を作用させない条件の試験結果を、既往の非排水液状化試験と比較した結果、両者に本質的な差異は認められず、本研究によって開発された試験装置による試験結果は通常の試験装置による試験結果と同等であることが確かめられた。さらに、上向き浸透流を作用させて粒子沈降がない条件での液状化強度は、浸透流が無く粒子沈降が生じる通常の試験による液状化強度に比べて若干大きく、特に供試体の密度が小さい場合にはその差異が比較的大きいことが確認できた。しかしながら、その液状化強度の違いはかなり小さく、通常の粒子沈降が生じる条件での試験結果は地盤の液状化危険性等を判断する上で安全側の判断基準となることから、これを特に補正することなく設計等に用いても大きな問題はないと考えられる。
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