研究概要 |
圧密降伏応力を跨ぐ荷重や繰返し荷重によって沖積粘土地盤や洪積粘土地盤で当初の予測を大きく超える過大沈下が長期にわたって起こり,社会基盤施設の建設・維持・管理の面で大きな問題になっている。そこで,本研究では,ベンダーエレメント付きの分割型圧密試験を行なって,圧密過程中に粘土骨格の構造変化によって有効応力やひずみの地中分布がどのように変化するかを明らかにし,圧密過程中に沈下量が急増するメカニズムや残留沈下が継続する理由を明らかにするとともに,得られた知見をもとに骨格構造の変化を考慮できる二次圧密モデルを構築して,実問題への適用性を明らかにする。 平成22年度は,前年度に製作したベンダーエレメント付きの分割型圧密試験装置を用いて,不撹乱自然粘土供試体中を伝搬するせん断波速度を測定し,圧密過程中に粘土骨格の構造変化を観測した。圧密試験は,過圧密領域内で段階載荷する試験,先行圧密圧力をまたぐ荷重まで段階載荷する試験,および完全に正規圧密領域まで段階載荷する試験の3ケースを実施した。なお,最終荷重段階では3つの供試体の排水経路を直列につないで供試体1の上面を排水面とし,供試体3の下面を非排水面とする片面排水条件とした。 その結果,粘土の骨格構造の強固度を表すせん断弾性係数は,圧密圧力が増加し,間隙比が減少(密度が増加)すると過圧密領域では単純に増加するが,先行圧密圧力をまたぐ荷重を載荷した場合は間隙比が減少しても単純には増加せず排水面側から減少し,さらに正規圧密領域に入ると再び排水面側から増加していることが明らかとなった。これは,先行圧密圧力によって形成された骨格構造が圧密降伏応力付近で排水面側から破壊されるが,正規圧密領域に入ると新たに強固な骨格構造が排水面側から形成されるためと考えられる。
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