研究概要 |
本研究は,地盤工学に係わるリスクについて,裁判の判例や保険などの多くの事例から体系的・有機的に整理・類型化し,我が国における地盤工学分野での契約・保証・保険制度やリスクコンサルタントなどのあり方といった包括的な地盤リスクマネージメントシステムを提案することを目的としている。この目的を達成するために、研究初年度(平成21年度)では以下の4種類の類型化作業を実施した (1)法律関係:裁判の判例から過去20年間における地盤工学に関連した事例を抽出し、類型化を行なった (2)保険・保証関係:保険・保証申請適用事例から地盤工学に関連した事例を抽出し、類型化を行なった (3)契約関係:国内外の契約における発注者と請負者の地盤リスクに伴う責任分担を抽出し、類型化を行なった。特に国内の設計施工一括発注方式・PFI事業の動向や海外で行われているGeotechnical Baseline Reportについて検討を行った。 (4)地盤リスク関係:地盤リスクの分類・同定手法・予測手法と事例について国内外の地盤リスクに関連する論文集から収集しデータベースを構築し,整理・解説した。その結果,論文のターゲットの多くが「調査」や「設計」に関するものであり,施工管理に関する論文が少なかった。また,リスクマネージメントの種類としては「リスク評価」に関する論文が多いなど,学術論文としては,地盤リスクに関する傾向は偏っており,現実と若干乖離していることが分かった。 (1)~(3)は、審査・判断する者(機関)が必ずしも地盤工学の専門家ではない。他分野を専門とする者(機関)の審査・判断結果が、地盤工学の専門家として最新の知見と整合しているか否かについて、この類型化作業により明確となりつつある。(4)から、国内外の地盤リスクに関連する論文集の傾向が見えてきており,学術論文と実際の問題との乖離および今後検討すべき対象分野が分かりつつある。
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