研究概要 |
本研究は,地盤工学に係わるリスクについて,裁判の判例や保険などの多くの事例から体系的・有機的に整理・類型化し,我が国における地盤工学分野での契約・保証・保険制度やリスクコンサルタントなどのあり方といった包括的な地盤リスクマネジメントシステムを提案することを目的としている。この目的を達歳するために、研究母終年度(平成23年度)では,今までの成果をとりまとめ,その成果として,地盤工学会誌講座「地盤工学におけるリスクマネジメント」を執筆した。以下に簡単に結果を示すと, (1)学術論文のデータベース化 地盤リスクに関連する学術論文のデータベース化を行い,地盤リスクの分類・同定手法・予測手法と事例を整理・解説した。さらに,地盤リスクの形態、地盤リスク発生の素因(斜面・沈下・地震・汚染・降雨)で整理を行なう。 (2)裁判事例のデータベース化 地盤リスクに関連する判例のデータベース化を行い,地盤条件情報の質・量、地盤リスク発生のメカニズム、訴因と地盤リスクの関係、暇疵と地盤リスクの関係、地盤リスクの予見性、地盤技術者の役割と責任、地盤工学から見た判例の適否(評価)について検討する。 (3)保険・補償や契約関係の整理. 地盤リスクに関連する保険・補償関係の事例について,地盤条件情報の質・量、地盤リスク発生のメカニズム、瑕疵と地盤リスクの関係、地盤リスクの予見性と関係者の責任分担、地盤技術者の役割と責任、地盤工学から見た判例の適否(評価)についてまとめる。また,国内外の契約における発注者と請負者の地盤リスクに伴う責任分担について調査する。 上記の結果を踏まえて,判断に地盤工学の知見が利用されない事例が多く見られることが分かり,法律の専門家をはじめとした多くの社会技術者との連携を深めることにより地盤リスクに関する諸問題を効率的に解決できうることを示した。
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