研究概要 |
希少頻度で生起するメガリスクの統計解析は,水域防災施設の設計外力を定める上で,不可欠である.しかしながら,30年程度の観測記録に対して,1度来襲しているか否かのレベル(既往最大外力あるいはそれ以上)にある設計外力を「外挿により」決定する.そのため,推定量の信頼性の指標が必要となる.経験度は,1)推定誤差の表現として,確率外力の信頼区間に変わるものであり,データの外挿がどこまで可能かを検討するものである.また,既往最大値は,しばしば,外れ値となる.そのため,経験度は,2)母分布の母数推定に与える外れ値の影響の度合いを計るものにもなりうる. このような指標を表す経験度について,時間に依存する極値モデルに組み込んだ検討を行った.その結果,1)経年変化が無い場合でも,観測期間の中央年から遠ざかるにつれて,経験度が低下(すなわち,推定精度が低下)することが明らかとなった.2)非定常な極値モデルに対して,少なくとも2種類以上の定義できる再現期間(瞬間超過確率仁よる定義Aと平均超過確率による定義B)に対応した経験度が定義できる.推定計算に用いることのできる1年あたりのデータ数が少なくなれば,定義Aによる経験度の低下が急激である.その一方,対象とする再現期間が長くなれば,定義Bによる経験度の向上が急激であることがわかった. 規則的に変化するトレンドのみならず,不規則に変動する気候変動指標(SOIなど)を共変量とする検討も行った.既往最大値のように,頻度として稀な場合は,その経験度が低くても,極値解析の際に,対象データとして含めた上で,推定結果を否として検討を保留すべきであることに対し,気候変動指標の値が稀となるために経験度が低下する場合には,同種のデータが絶対的に少ないことを意味するため,極値解析の際に,対象データとして含めることさえ控える必要があると解釈できることを示した(一部の極値データを使用しない判断の根拠を与える).
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