研究概要 |
降水量の2+1次元ダウンスケーリングのうち,本年は空間的な2次元ダウンスケーリング部分について検討した.時間的なダウンスケーリングである"+1次元"部分については,最終年度に検討する.得られた成果は以下のとおりである. (1)地形性降雨を考慮するという観点から,「マルチフラクタルを用いた降水量のダウンスケーリング」には,地形(標高)のマルチフラクタル性の解析が不可欠と考え,日本全域にわたって,それを調査した.その結果,まず,スペクトル解析により,日本の地形(標高)がマルチフラクタル性を持っていることを確認した.さらに,マルチフラクタルを規定するパラメータを求めることにより,南北,東西方向のマルチフラクタル性が同じである,つまり,2次元的に等方的であることを示した.また,フォッサマグナや中央構造線を挟んで際立った性質の変化がないことも示した.ただし,この種の研究の先駆者であるGagnon et al.が示したパラメータの値とは,若干異なるものを得たので,それが,解析対象地の違いによるものなのか,解析手法の違いによるものなのかを,現在検討中である. (2)マルチフラクタル的ダウンスケーリングに不可欠な「確率分布」であるLevy分布(安定分布)については,explicitな確率分布関数や確率分布関数がないので,非常に扱い辛いが,これらを数値解析的に扱うルーチンと,さらに,母数を求める手法について,従来提案されているものを高度化した.
|