研究概要 |
当初,マルチフラクタル理論を用いて,2+1次元のシミュレーションモデルを開発しようとしていたが,最終年度の結果として得られたのは,以下のようなものである. 1)モノフタラクタル(fBm,fLm)を高度化したものがマルチフラクタルで,一般にそちらの方が優れているとされている.特に,この分野の先駆者である Lovejoy and Schertzer はそう主張している.しかし,マルチフラクタルを用いる場合,パラメータを決める際に,いくつか重大な欠点がある.そこで,fBm, fLm のようなものフラクタルモデルを用いることも検討すべきである. 2)マルチフラクタルで2+1次元のモデルを作成する場合,モデルのパラメータのうち,αというパラメータは,x,y方向(東西,南北方向)と,時間方向で同じでなければいけない.そうでないと,モデル化が非常に複雑になり,現実で気にはモデル化できない.ところが,降水量データを用いて検討した結果,空間方向と時間方向のαは異なることがわかってきた.そこで,このままでは,マルチフラクタル理論を用いて2+1次元モデルを開発するのは困難と思われる.そこで,この先は,科研費後の研究課題としたい. 3)時間方向だけを取り出して降水量時系列データを生成するモデルは,非常にユニークなものでできた.e-model と称しているが,fBm/fLm に類似で,ただしフラクタルではない,フィルターモデルである.これについては,AGUで発表もし,現在AGUの雑誌で発表するべく論文作成中である.このモデルは,E(ω)=ω**(-β) というようなフィルターを使わない.このフィルターを使えることが,場がモノ/マルチフラクタルであることの必要条件であるが,調査の結果,日降水量データの時系列には,指数関数型の別のフィルターが適していることが分かった.今後この理論を発展させてゆく予定である.
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