研究概要 |
本研究では,河川の水量・水質に関する野外調査と分布型モデルを利用した水・物質流出解析を実施して,果樹栽培が盛んな流域(農業集水域)における水環境を評価する.それにより,河川の水環境に関する諸問題を解決し,流域における健全な水・物質循環の確立に向けた方策を検討する.対象は奈良県南部と和歌山県北部を流れる紀の川流域である.平成22年度には主に以下のことを行った. 1、流域情報のデータベース化(GISデータベースの構築) 水流出解析や汚濁負荷量解析といった数値解析に利用するために,野外調査データや行政機関の河川定期モニタリングデータ,各種流域情報(標高,人口,土地利用など)をGIS(地理情報システム)上でデータベース化した 2、数値解析モデルの構築 本研究では,流域内の水と物質の動きを空間的かつ動的に解析するため,流域水環境情報解析システムを構築することが重要である.紀の川流域の水物質の流出に影響を及ぼす農業活動には,ダムからの放流,頭首工からの取水,農業用水路やため池などの人工的な水の流れ,農地からの汚濁負荷などがある.平成22年度はこれらの中でも農地からの窒素流出が河川水質に与える影響を分析するため,分布型水流出解析モデルとマクロモデルを組み合わせた窒素流出負荷量解析モデルを作成し,紀の川流域内で果樹園の占める割合の大きい柘榴川に適用して,モデルの検証を行った.その結果,流域の3分の1を果樹園が占める柘榴川流域では,果樹園からの窒素流出負荷量が最も多く,特に施肥時期の秋から春にかけて河川への流出が多くなる傾向が示された.
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