研究概要 |
現地観測については,2011年7月16日(中潮期),ならびに12月4日(長潮)の両日に,筑後川から諌早湾へ結ぶライン上に5地点の観測点を設けて,超音波ドップラー流速計ADCP,レーザー回折式浮遊懸濁物粒度スペクトル測定装置LISST-100X,ならびに乱流微細構造プロファイラTurboMAPを併用した測定を行った.さらに,8月21日~22日(小潮),10月2日~3日(中潮),ならびに11月28日~29日(中潮)においては,北部有明海の中心に位置する観測地点において,25時間連続で前述の観測機器を併用した測定を行った.これらの観測より,主に筑後川を起源とする淡水と土砂について,出水(河川流量),海洋構造(塩分・水温成層),土砂濃度と粒度分布,ならびに流動・乱流などの物理構造との関係性を調べるためのデータを取得できた,これらの観測結果は,数値シミュレーションの精度検証や,モデルパラメータのチューニングに使用できると期待される. 次に,数値シミュレーションについては,昨年度までに汎用型沿岸域流動モデルDelft3Dにより開発済みの有明海-八代海結合3次元流動モデルに,粘土・シルト分などの粘着性堆積物の浸食(再懸濁)・再堆積過程を組み込んだ輸送モデルを結合させたモデルを使用して,河川起源土砂の輸送状況や底泥が再懸濁して輸送され再堆積する過程についてシミュレーションを行った.沈降速度の評価には水中の浮遊懸濁物濃度の上昇による干渉沈降も考慮されたモデルを組み込んだ.その結果,潮汐条件(18.6年周期のM2潮変動など)により潮汐の非線形性が浸食・堆積域を変化させることなどが明らかとなった.
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