研究概要 |
本研究では,砂礫の間隙を埋める程度にしか粘土が含有されない流路(「粘着性流路」)が流水の作用を受けて変動して動的安定状態に到る過程に注目し,そのメカニズムならびに安定河床状態を明らかにしました.また,従来の流砂研究に比べて極端に広い粒度幅の材料によって流路が構成される場合を対象として,その安定河床状態についても実験的に検討しました.これは,河床の骨格が洪水時でも移動することのない大礫より構成され,その間隙が砂礫あるいはシルトで充填されている場合に相当します. 2011年度の主な成果は以下の通りであり,当初の目的をほぼ達成することができました. (1)土砂全体に占める粘土の体積比率(粘土含有率)が30%未満の供試体を対象とした基礎的な浸食実験を継続し,申請者がこれまでに誘導してきた「粘着性土の浸食速度式」のさらなる検証を行いました. (2)粘土のみからなる直線流路の動的安定状態についての基礎的な移動床水理実験を行い,流路上流端から砂礫を給砂することにより粘土河床の浸食が促進されること,ならびに特徴的な河床の鉛直分級が生じること,などを明らかにしました.これについては2012年度土木学会年次学術講演会論文として投稿済みです. (3)(2)の実験によって確認された流路の変動過程に加えて,申請者が以前に行った「粘着性斜面の降雨による浸食過程」を対象として,これを数値解析により再現可能とする解析モデルを開発しました.研究成果は今後速やかに論文にとりまとめる予定です. (4)流路が粒度幅の極端に広い材料により構成されている場合にも,河床に顕著な土砂の分級が生じることが明らかになり,その構造について定量的な評価を行いました.
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