研究概要 |
(A)植生基盤における洗掘現象の解明とその防止策に関する研究においては,以下の成果が得られた. a)2次元造波水槽内の模型海浜砂層上に,ヨシ等の抽水植生やアマモ等の沈水植物をモデル化した円柱群や人工海藻およびこれら実植生を設置し,植生に作用する波力特性,植生基盤内の局所洗掘特性,ならびに海浜地形変化に及ぼす植生群の影響を調べた.沈水植物が波力により引き抜かれる可能性は非常に小さく,植生基盤内に生じる局所洗掘による根の露出により沈水植物が消滅する現象を明らかにした. b)平成23年度は,中海の白鳥海岸で現地観測を6回(4月,6月,7月,10月,12月,3月)実施した.自然生育および移植したコアマモ群落周辺の海底地形は,年間通して大きな変動はないが,高波浪時には若干低下する傾向が見られた.その結果,コアマモ群落の生育は4月~10月の間には認められたが,10月以降は確認できなかった.波高と流速計測の結果,湖面の風速が約6.5m/s以上になると,海底砂の表層が集団で動く「表層移動」が生じることが推定した.この表層移動の結果,本海域ではコアマモの安定した生育は困難であると思われる. (B)ホトトギス貝による砂泥表層の硬化安定作用に関する研究においては,以下の成果が得られた. a)ホトトギス貝の「足糸」による砂泥表層の硬化安定作用を検証する現地観察を行なった.ホトトギス貝の成育密度は少なかったが,「足糸」による束縛や貝本体の存在により,砂泥表層の安定化は認められたが,ホトトギス貝群落内でのコアマモの成育密度は希薄であった.他の文献報告に見られるように,コアマモとホトトギス貝の共存,共生は困難であると思われる。 (C)ヨシ等の抽水植物基盤の洗掘と保全修復に関する研究の応用として,2011年東北地方太平洋沖地震津波による海岸林被害の現地調査を実施した.津波流体力による松林の倒壊,倒伏の実態や,津波来襲時の高速流による松樹幹周りの局所洗掘現象を観察した.
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