研究概要 |
本年度は,前年度までの成果(研究実施計画の1~3)を整理し、4・5のための実態調査を行った。 研究3に関連して、公共交通サービスの社会的経済価値を評価する際、直接的利用価値のみに着目した費用便益分析では、オプション価値や非利用価値を無視することになり、便益の過小評価になると考えられる。そこで、測定手法として仮想市場法(CVM)ではなく、主として国外で研究が進んでいる表明選択法(SCM)を提案し、過疎地域の事例とは異なるものの、ケーススタディとして富山ライトレールおよび富山地方鉄道を対象にしてオプション価値を含んだ経済価値を測定した。さらに、オプション価値便益を算出し、そのオプション価値便益の持つ意味を吟味し、公共交通機関の正当な評価のためにオプション価値を含めた検討が重要であることを指摘した。 研究4・5に関連して、中山間地域のモビリティおよび生活の質を持続的に管理するという視点から、地域住民の主要な外出目的となる買い物行動に関して、モビリティのハンディキャップを補完しうる移動販売の実態を調査し、サービス消費者である地域住民の立場から検討するために山古志地域住民を対象にアンケート調査を実施した。その結果、移動販売サービスが本来持つ、商業目的のサービスという点では、多くの集落で移動販売サービスを利用したいという意見が多く、事業的に十分かどうかは問題もあるものの、しばらくは本来の商業目的でもサービスが継続されそうであると判った。加えて、このような地域で懸念される地域コミュニケーション機会の減少に対する一つの手立てとして機能しうることが示唆された。
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